早寒(そうかん)


今年は早々に寒さがやってきた。

もとから寒さの厳しいこの土地で、秋というのはある意味勝負どころである。冬への準備期間が短いと、なかなか苦労が多い。

かよは手袋を脱いで、ひんやりとする漬け物壺に触れた。今日の晩ごはんに出すきゅうりを探り出さなくてはならない。糠ももちろん冷たいのだが、頼まれたからには仕方がない。

ぐにゃりとした糠に手を突っ込むと、指先が白くなるが目に浮かぶ。そして赤くなるのだ。手の温度が急激に奪われて、寒気がする。なんとかきゅうりを捕まえて、すぐに手を洗った。

お湯を浴びてジンジンしている手に、もう一度手袋をする。赤い毛糸の、もうずいぶん使い込んだ手袋である。2年前他界した祖母が編んでくれたのだ。指の長さが少し短くて、何か作業をする時には不便だが、かよはその手袋が大好きだった。

お昼になって、雪が降った。積もった雪で遊ぼうと、近所の友達に誘われる。かよは、その手袋で雪だるまを作った。もちろん毛糸の手袋には荷が重く、ぐっしょりと濡れてしまった。かよはその手袋を脱いで、近くの石段に置いた。

遊び疲れた子供たちが家路についた後も、その赤い手袋はそこにいた。

夜、再び雪が降り、明け方はひどく冷え込んだ。かよは冬のような寒さの中で、早朝からあの手袋を探しまわった。

昨日遊んだ場所に行き、埋もれてしまった雪だるまを眺めて、かよはがっくりとした。きっと、手袋も埋もれてしまって見つからないだろう。

しばらく白い息を吐きながら、ぼうっとあたりを見回すうちに、ふと視界に白以外の色を見つけた。微かにピンクのような…。

かよはすぐに駆け寄った。代わりにしてきたスキーグローブで、ピンク色を掘り返す。

ざくっ、ざくっ。

やっと見つけた。赤い毛糸の、おばあちゃんの手袋。

手袋は雪だらけで、ぱきぱきに固くなっていた。かよは嬉しそうに凍った手袋を抱きしめた。

寒く厳しく、長い、この土地の冬を、かよはこの手袋で過ごしていく。







あとがき
なんかよく判らないのパート2。
これは半分くらい授業中(…)、半分くらい図書館で書いたもの。
やっぱりランダムなので、なんで秋冬の話なのかとか思わないで下さいませ。
しかし…「かよ」って誰だろう…。でも「かよ」って名前、可愛いですよね…(笑)


作成日不明・ひきつぎ文








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